会員寄稿

明治ビジネスチャレンジと連合駿台会

連合駿台会常任理事
富水流孝二
2025年4月11日

 

アメリカのトランプ関税の影響で先が読めない経済状況下においても、日本の今年の春の賃上げ平均が現段階で5.46%、4月からの新入社員の給与が30万円と発表する企業も出るなど、明るい話題も出ている。

このような経済状況の中、2025年3月14日、明治大学グロ-バルホールで、経営学部主催の明治ビジネスチャレンジ最終選考大会が開催された。

明治ビジネスチャレンジは、明治大学発のスタートアップの育成等を開催テーマにしたもので、今年が3回目であった。

最終選考に残った8組で登壇した学生の個々人の起業は、学生らしく、若さを生かしたユニークな発想に基づくもので聴衆も感動させられたのではないだろうか。

明治大学の教育の一環として、このような企画は明治大学の本部機能が千代田区の駿河台キャンパスに存在することから、現在審議されている文科省からの私学助成金3000億円の配分基準の一つとしての、「地域との連携を進める、地域人材育成の具体策」等にマッチするものである。

明治大学発、千代田区発のスタートアップは、大学支援交付金の対象内容としての意義も大きいものである。

起業家学生達の発表は、上野学長が目指される多様化した時代を生き抜くための複眼的思考ができる学生教育の実施の流れを感じさせる内容でもあった。

具体的に一例を述べるなら、最優勝の工学部代表の起業は、初任給30万円、年間300万円を新入社員に投資する企業の人事リスクを念頭に置いた内容である。

そもそも起業のきっかけは、友人の欝病とそこからの自殺にショックを受けた身近な体験からであった。

そこで考えたのが、病気の早期発見で会社の優秀な若い人材を救い、企業の人的資本(ヒューマンキャピタル)を保護しようとするものである。

具体的には月1回大学病院等において、10分程度のワイヤレスヘッドホン診察で欝等の前兆を捉え、改善策を図るもので、企業ニーズに沿うと審査員の高評価を得たものである。

国際標準化機構(ISO)による人的資本に関する情報開示の指針に基づき、2023年3月期以後の事業年度から企業に対しては、人材の多様性、安全、労働力、コンプライアンス、コスト等に関する開示が有価証券報告書に義務付けられたことから、時代のニーズに合った人的資本の測定指数の「安全」分野に結びつく起業である。

起業された事業の拡大は、投資家の賛同が欠かせないが、投資家サイドから見たら、投資の際の動機、基準は起業家の誠実さ、教養である。

フィデリテイ・ジャパンの元副会長「倉本康夫」氏は、投資の原点を次のように説かれている。

「株価を買うのではない、企業そのもの、ひいては優れた経営者に投資することが重要だ。」と。

審査員の一人が起業家の評価として、「投資家、融資する側は人が8割である」がその表れでもある。

このように常に一歩前へ、成長に富む企業を育み、リスクマネーとして支えた株主に果実をもたらそうとする起業家。こうした循環をうみだす起業家が資産運用立国の主役となるべきであると改めて感じた貴重な1日であった。

人生100年と言われる現代において、先ず連合駿台会が学生支援態勢を更に強くするなら、これまでの現存する企業との協賛でもあるビジネスインサイトの支援に加え、明治ビジネススタートアップも支援することは、大学や連合駿台からして、明治の人材育成への先行投資でもある。

上野学長が、来年度からの明治ビジネススタートアップの企画は、経営学部主催から大学全体の主催にすることを明言されたのに合わせて、連合駿台会からの表彰が先々の組織運営に効果を発揮するばかりでなく、存在意義(パーパス)にもなり得るのではないだろうか。

審査員の一人、明治大学のグローバル・ビジネス研究科の岡専任教授の「次の時代を作るのはいつの時代もℤ世代・青年であり、大学院も頑張ります」との発言も、教育の立場から学生支援を行う現場の決意であった。

今後大学発の起業はオーナー会社として、母校愛の大きな寄付につながる可能性を持った絆の形成でもある。

起業する学生と、同じ時代を生き、共に明治大学で学んだOB会のメンバーとして先々再会し、連合駿台会でも活動頂けることを大いに期待している。

 

2025年3月吉日